第一章 世間体を作り上げているもの(1/5)




■第一章 世間体を作り上げているもの


これから5回に渡って、この「男らしさ」をテーマにお話します。

僕は男性が育児社会に参加しない理由、その大きな要因に
世間体がある、そしてその世間体を作るのが
それぞれが持つ「らしさ」の基準にある、と考えています。

今回はこの「らしさ」について考える、導入のお話です。


【なぜ、そんなに「男らしさ」にこだわるの?】


僕は2年前くらいに「シュフ。」という電子本を出しているのですが、
そのサブタイトルに「ボクは男らしい専業主夫になる」とつけています。
Twitterでも、ブログでも、男性育児のテーマでは
ちょいちょいこの「男らしさ」を話題にします。

この字面だけみてると
ムーチョって奴は、男らしい、男らしいなんて言ってて
 前時代的なマッチョ思考を持ってる奴だなあ

なんて思うかもしれません。

しかし、これを主張するのには理由があります。

僕は、育児社会における「男性の活用」を進める上で、


「世間体」という、日本における強烈な同調意識


が非常に大きな壁になっていると考えているからです。

では、世間体を作り上げているもの、ってなんでしょうか。

僕はその一つが個々が自分を認識する一つの基準、
「男らしさ」だと考えています。

だからこそ、ここにずっと注目しているのです。


【世間体を作ってる「らしさ」】


男が奥さんのパンツを洗うなんて・・・

男が仕事もせずに昼間から街をプラプラしてるなんて・・・

男が仕事よりも家族を優先するなんて・・・


「男がそういうことをやるのはちょっと抵抗がある」

僕はシュフを6年ほどやっていて、ブログ、講演、セミナーなどで
いろんな方の話を聞きますが、こういう言葉は、
男性からも、女性からも
言われます。

これは年齢層や地域などによって大きな差もあります。
20〜30代は、あまり抵抗がない方が多い。
逆に40代以上だと、かなり抵抗を感じてる人が多い
というのが個人的な印象です。
これを読んでいる皆さんも、こういうことを言う人が
日本にいる、ということは想像つくだろうと思います。

でも、普通に考えたら、なにが「変」なんでしょうか
なにも変なことはない気がします。
むしろ、男もそういうことをやった方がメリットがたくさんある、
という言説は、僕が例を挙げるまでもなく、
多くのワーク・ライフ・バランスの先駆者達が主張しています。

ただ、

”周りのほとんどの人がやってないから、
「変」と言い切るだけの確固たる理由もないけど、なんか、抵抗ある”

んですよね。


【”周囲の目”って、具体的に誰の目?】


だから、いつも聞かれるのが

・ご両親はどう思ってるの?義理のご両親は?
・友達や同僚からはなんて言われたりしてる?
・ママ友と馴染める?ぶっちゃけ浮いたりしない?

周りからどう見られてる?
周りはどう考えてる?
周りはなんて言ってる?

「らしくない」ことをやると、皆、これを恐れます。


周囲の言う「世間体」はその人の考え方を押し付けているだけ! 
壁はもっと簡単に乗り越えられる―田中俊之さん×藤井佐和子さん対談


この記事に世間体のことが語られていて共感しましたが、

「周囲の人が言う「世間体」って、実は世間全体の意見ではないことがほとんどなんです。
親や友人が言う「世間体」は、その人の考え方を押し付けているに過ぎない。」
自分で壁を作ってしまうこともある

世間体というのは、世間ではなく、ものすごく小さい規模の、
少数の人達の意見に過ぎないことが多いんですよね。
また、そのイメージは必ずしも周りから言われたことによって作られるわけではなく、
自分自身で作り上げてまうことも多々あるのです。


【自分で作り出した”仮想敵”との不毛な戦い】


ここで、「自分が持つ自分自身のイメージ」の話が絡んできます。

男なのに、奥さんのパンツを洗ったり、
昼間のスーパーで買い物をしたり、
仕事もしないで家で家事をやったり・・・
男なのに・・・らしくない・・・

実際、僕もこう思ったことはありました。
作業自体が嫌いなわけじゃないんです。
スーパーの買い物だって、例えば完全に無人なスーパーだったり、
「仕事」という名目があってスーツを着て買い物にいってるなら、
後ろめたくはなかったでしょう。
しかし、主夫としていく、というのは、はじめ抵抗があったのです。

周りからなにも言われていないのに、
「らしいこと」をしてないがゆえに周りの人がなにか言っているんじゃないか、
白い目で僕のことを見ているのではないか、
という不安が常につきまとっていました。

で、実際しばらく主夫をやってみると、それは全くの取り越し苦労で、
日常生活で後ろ指を指されるようなことはほとんどない、ということもわかったのですが。
(ちょっとはありますが、でもそれはきっとどの職業でも発生するレベルのもの、という認識です)

誰もなにも言ってないのに、
僕は自分一人で「周りの白い目という”仮想敵”」を作り上げて
そいつとずーっと一生懸命戦っていたんですね。
端から見ているとアホらしいかもしれませんが、
僕にとっては当時、本当に辛かったのです。

主夫を始めた直後はこういった”仮想敵”が
日々の主夫業務の大きな心理的ブレーキになってしまっていて、
ものすごくストレスでした。

「らしく」ないことが、自分の中で間違った世間体の認識を作ってしまい、
心理的なブレーキになってしまうのであれば、それは大きな問題です。

心理的ブレーキがかかっているものを、無理矢理やろうとすると
ものすごくストレスだし、疲れるし、また自尊心も傷つきます。
なにより、そんな無理矢理やってるようなことは、続かない。

だから、いくらこういう「男らしさ」しか持っていない人に
「男性の育児参加が大事なんだ! だからやれ!」といっても、
本人に心理的ブレーキがかかってしまっているのでは、どうしようもありません。


僕は、育児社会における男性の活用を進める上で、
まずこの

「心理的ブレーキ」をとる必要がある

と思っています。


【サラリーマンの頃は「男らしさ」なんて、どうでもよかった】


では、そんな間違った世間体の認識、心理的ブレーキを作ってしまいがちな
「らしさ」のイメージですが、

そもそも「男らしい」ってなんなんでしょう?

というか、

「男らしい」

この言葉を聞くだけで、違和感を覚えないでしょうか?


実は僕自身、こんなこと言っててちょっと恥ずかしいんですよ笑


なんか、恥ずかしいじゃないですか、「俺は、男だー!」って
あえて主張してるようで。
「え?ほんとは男じゃないの?」みたいな。
「男らしさ」という単語を自体、あまり見かけないし。
なんかマッチョっぽいイメージあるし。

僕は7年前までは企業のサラリーマンでした。
毎日スーツを着て、ネクタイを締めて、
通勤電車に揺られ、オフィスに向かっていました。

上司に叱咤激励され、飲み会にも参加して、時にはバカもやり。
人並みに向上心、自分の与えられた役割にプライドを持ちながら
毎日の目の前の仕事をこなしていました。

僕がその時に「男らしさが〜」みたいなことを言ってたかというと、

全く言ってませんでした。

別に、「男らしさ」とかどうでもよかったし。
そんなの語らずとも、自他ともに「男」なのはわかりきってることだし。
意識すらしません。

しかし、主夫になってから、気になり始めたのです。
(主夫になった経緯は長いし本筋とあまり関係ないから
ここでは割愛、詳しくはを読んでください)


育児にちょろっと参加してる共働きの時は全然なかったのに、
主夫としてがっつり育児の主担当になってから、モヤモヤし始めたのです。


「僕って・・・男らしいことしてるのかな・・・?」


ここで僕が失ったものとは、一体なんなんでしょうか?
それはまた後ほど詳しくお話します。


さて、ここまで読んだ人の中には、

「そんなの気にすること無いじゃん、男も女も関係ないよ、
自分らしく”いればいいじゃん、小さいことを気にし過ぎ」

と思う方もいらっしゃるでしょう。
確かにそうかもしれません。

強い、どんな環境でも揺るがない確固たる自分というものが
形成されているのであれば気にすることはないと思います。
そういう方はこの文章を読む必要はないので、そっと閉じてもらって
構いません 笑

ただ、ちょっと考えてみてください。
「自分らしさ」って、なにでできているのでしょうか?

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男性の育児社会進出を阻む、世間体。
それは各々が持つ特定の性のあり方、「男らしさ」のイメージから
形成されているというお話でした。

次章は、他の「らしさ」と比較することで、
「男らしさ」を考えてみたいと思います。



→ 第二章「男らしさ」の反対は、「女らしさ」?