『プロチチ』




今回ご紹介する主夫本は、「プロチチ」1巻です。

「プロチチ」は現在イブニングで連載されている、主夫をテーマにした漫画。作者は少女漫画家の逢坂みえこさん。この漫画の存在は連載の途中で知ったので単行本が出て始めからまとめて読めるようになるまで待っていました。 先月に初の単行本が発行となりましたので、ここでレビューさせていただきます。



【女性作家が男の気持ちを描く】


まずプロチチで面白いなと思ったところは、「女性作家が男性視点で子育てを描く」という点。以前紹介した「スーツ主夫☆ゴロー」も女性作家でしたが、この「プロチチ」は「スーツ主夫〜」よりももっと真面目なノリ、またストーリー漫画なので毎回テーマがあります。笑いの部分も少しありますが、基本的に主人公の主夫・徳田直のモノローグが多く、子育てや家事、人間関係に悩む様が描かれています。

周りの人から「男なのに働いてないの?」と言われた時の気持ち。

オムツ替えなどのやりがいののないルーチン作業をやらされている気持ち。

こういう男の細かい心理描写って、女性視点で描くのは結構大変なんじゃないかな、と思ったんですけど、

これがなかなか上手いんですよ!

作者は相当取材してるんですかね(僕なんか自分自身が主夫なのに主夫の気持ちを上手く表現するのは難しい、と感じているのに!) さすがプロですね。この漫画を読む前は、最近男性の育児参加が「流行って」いる中、そういう流行に乗っかった薄っぺらい漫画なのかな、とちょっとうがった想像もしましたが、違いました。きちんと描かれていますし、描写の端々にその丁寧さが伝わってきます。



【主人公は「アスペルガー症候群」(多分)】


この漫画は「男性が主夫をやる」というのがテーマであり、それだけでも十分面白いのですが、主人公は更にもう一つ「アスペルガー症候群」(長いので以下「アスペ」と略します)という特徴ががあります。明確に作中で「診断」されたわけではないのですが、描かれ方からいってまあそう捉えて差し支えないのでしょう。

物語の当初は、

「男が主夫やるだけで十分大変なのに、更にアスペなんて、どんだけ無理ゲーだよ・・・・・・」

なんて思わせます。アスペの人は「規則性」や「論理性」、「因果関係」を非常に重要視する傾向があるということで、そういう意味では感情だけで動き、行動にほとんど規則性がない「赤ちゃん」という存在を相手にするのは、相性が悪過ぎます。物語でも、あまりの相性の悪さに読んでいるこっちがハラハラします。

ただ、読み進めていくと、意外とアスペの人との親和性というのも見えてきます。それはいわゆる常人とは少し異なった視点から子育てというものを捉えていたりして、いろいろ気づきがあったりします。

同じことを何度も繰り返す遊び、乳幼児と遊んだ経験のある方はわかると思いますが、乳幼児って本当に好きなんですよね。それこそ何十回、何百回とずっと同じことを繰り返しています。しかし、それに付き合わされる大人はたまったものじゃない。十回くらいやった段階で飽きてしまいますよね。でもアスペの人はそういうのがあまり気にならない、むしろ繰り返しを好むので波長が合う、なんてエピソードもあります。

また、アスペならではの視点だなあと、印象に残ったセリフが以下。



(子供に対して愛が持てないと悩んでいる他のパパに対して)

必要ですか? 愛って。



A.愛がある

B.愛がない

ならAの方が望ましいでしょうが

A.愛はあるけど世話しない

B.愛はないけど世話はする

ならBががベターだと思うのです

特に乳幼児期は



「愛」はコントロールできないけど

「世話」は努力でなんとかなる




確かにそうだな、と思いました。 普段はここまでドライというか、客観的に考えにくいですよね。 物語ではもっと気持ち的な部分のリアクションを予想して相談したパパはこの返答を受けてちょっと面食らってしまうわけですが、確かに乳幼児ってこんなものなのかもしれません。話も通じないし、それこそ犬や猫みたいなもんですから。愛だのなんだの言う前に、手を動かせってことですよね。

他にもいろいろアスペの男性ならではの視点で描かれているのですが、僕はアスペでもないのになぜか共感してしまいました。  なにか特定の物事にこだわり、集中するというのは男性に多い傾向でもあるので、もしかしたらこの主人公程ではなくとも、男性ならば誰しも大なり小なり似たような部分を感じるのでしょうか。



【今後が気になる!】


主夫の視点から書かれた本は今までもいろいろ読んできました。「主夫本」というのは主夫以外の方が読むといろいろ気付きがあるのかもしれませんが、同じ主夫が読むと、どちらかというと「あるあるネタ」で楽しむ、といったものが多いです。しかしこの漫画は主人公が主夫であり、更にアスペだということで、同じ主夫の僕にも「この主人公は今後どうなるんだろう?」と全く今後の展開が予想できません。 1巻ではまだ子供が0〜1才ですが、今後もっと大きくなっていったら、この主人公は子供とどうやって接していくのか、とても興味が湧きます。もっともっと普通の育児者では気付かない、いろんな視点から育児を見て、語って欲しいと思わせます。



この本は一冊定価590円ですが、個人的にはこの値段なら買う価値ありだと思います。特に現在乳幼児の子育てをしているパパ・ママにお勧めします。



【オマケ】

漫画自体は面白かったんだけど、この本の帯がちょっと気になりました。だって

「天才子役、芦田愛菜を育てたプロも読んだ!」

って煽り文とともに株式会社ジョビィ・キッズの社長・土屋喜美氏の紹介文が載ってるんだけど。

「プロチチ」のテーマとはほとんど関係ない立場の人だよね、この人?

せめて最近目立ってる、イクメンを売りにした芸人でも使った方が良かったんじゃ・・・


関連する記事