『逸子さん、僕が主夫します!』



今回ご紹介するのは、2007年出版「逸子さん、僕が主夫します!」です。 著者の日高氏は競艇選手の夫。競艇選手という特殊な職業の妻を支える立場から、主夫のとしての生き方を描いています。

■主夫の話があまり・・・


そもそもこの本を書店で手に取る人は、「主夫」というキーワードに惹かれる、と予想できます。だってタイトルが「逸子さん、僕が主夫します!」だし(逸子さん、という名前だけで競艇選手の日高逸子さんを連想する人はあまりいないでしょう)。 なので当然「主夫」に関する話題が中心になっている本なのかと思いきや・・・!?

本の前半は、著者である夫と、競艇選手日高さんの馴れ初めについて書かれています。いや、確かに主夫を語る上で奥さんの話ってのは無くてはならないし、夫婦がどんな性格で、どんな関係なのかを知っておくのは大事だとは思うけど、そこまでページ割く必要あるか・・・!?

第一子の出産、育児の話になるのは、本の後半以降。もう少し主夫業の話をたくさん読みたかった・・・ 正直、馴れ初めはの部分は特に面白いことなんてないんですよ。どの夫婦にだって甘酸っぱい馴れ初めの時代はありますから。 話として面白いのは、やはり「競艇選手の夫という立場で、主夫として生きている」という部分。

「競艇選手は一週間は家に帰ってこないので、その間子供は全面的に夫が面倒を見る」

「今までは旅行会社のサラリーマンだったけど、いきなり馴れない料理や裁縫をすることになって、大変!」

こういう話をたくさん、具体的に知りたいのに!”主夫本”として、少し物足りなさが残ります。



■構成が分かりにくい


同じ主夫仲間、しかも主夫の先輩の本にケチつけるのもアレなんですが、僕としても普通にお金を払って本を買っているので、ここはバッサリいきます。

全体的に本として読みにくいです。状況の描写と、著者本人の気持ちの描写が混ざっていて分かりにくいことが多い。また、話が飛ぶ、話題が横道にそれることも多々あり、 「このくだりは要らんだろ!」 って何度も思いました。

こういう、時系列で説明しつつ話題がその都度横道にそれるという内容だったら、メインの文章と、コラム的な文章に分けて編集すべきです。章だてもされてあるものの、いまいちテーマがはっきりしないし、

「結局、ここではなにが言いたかったんだ?」

ということもしばしば。 主夫ネタとして「競艇選手の夫」という他にはない強烈なものを持っているだけに、非常にもったいないと感じました。



■温かい人柄がにじみ出ている


と、まあかなり文句言っていますが、あくまでも本に対してであり、著者に対してではありませんので誤解なさらぬよう。

というか、著者に関していえば、本を読む限り、とても温かい、優しい人柄が感じられます。特に、競艇選手のような過酷な職業の妻を持つ夫は、こういう家庭を一番に考える人が向いてるんでしょう。

よく女性が求める男性の理想像に「収入が高くて、仕事をバリバリやって・・・」なんてのがありますが、これはあくまでも一般的な職業の場合。競艇選手に限らず、政治家、医者、弁護士など、収入が多く、負担も大きい特殊な職業に就いている女性には、収入や仕事に対する向上心が高い男性よりも、家庭を大事にする意識が強い人の方が、きっとうまくいきますね。

主夫本としては物足りなさを感じましたが、プロの物書きっぽく偉そうな文章を書くよりも、こういう温かみが伝わってくるような文章の方が、逆に「 本当に主夫をやっている」というリアリティがあるのかもしれません。奥さんのことを好きで、好きで、尽くして、結婚の際には苗字を変えるのも厭わない著者の姿勢は、僕も学ぶものがありました。



■奥さんが特殊な職業の方に


この本を読んでピンとくるのは、僕の勝手な予想ですが、“奥様や彼女が特殊な職業に関わっている男性”です。ああ、こういうキャラになれば、夫婦関係が上手くいくんだ、みたいなヒントがあるのではないでしょうか。