『主夫の花道』

主夫本レビュー第一回は、『主夫の花道』です。


『主夫の花道』山下俊樹、村上ジュンコ(画) Discover 2005年

【概要】

著者、山下氏は30才で鍼灸師の資格取得を目指し、会社を退職。資格試験の勉強、そして育児の為に3年間主夫として生きることを決意する。その家事や育児の様子を描いたブログ『脱サラ子育て奮闘記』(※現在は無いようです)を書籍化したもの。本では内容が村上ジュンコさんにより漫画にもなっている。


【もっと前にこの本を読んでおけば!】


僕の娘達と近い年の子育て体験記ということもあり、とても共感するところが多かったです。

「育児をガッツリやりたいのに、子供が小さい頃は父親の出番があまりない、、、

同僚がどんどん出世していって、おいてけぼり感、、、」

妻の下着を洗うのはやっぱり抵抗ある!」

なんというか、もっと早くこの本を読んでおけば良かったよ、、、カタルエでも同じようなネタをたくさん描いてしまった、、、
それだけ、男が主夫になる時にはみんな同じことを感じるんだなあという確認にはなりましたが。

【“男のプライド”】

僕が特に好感持てたのは、男のプライドに感する描写が正直に描かれているところ。

「男のプライド!」とか主張してると、なんだかとても安っぽく聞こえますが、ジェンダー(性役割)というのは自分のアイデンティティを作る上で非常に重要なもの。男が「夏はこっちの方が涼しいから」という理由でスカートをはかされたら、いかに合理的な理由があろうと不快に思う様に、ジェンダーというのは合理的、非合理的に関わらず、社会的な習慣に裏付けされる価値観。普段男がやらないことをやることに対する抵抗感を上手く表しています。

例えば、奥さんの「扶養家族になること」。確かに主夫として生きるなら、奥さんの扶養に入った方が税金やら保険やらも安くなるし、都合の良いことばかりなんだけど、、、なんか腑に落ちない、、、というこの気持ち。

しかし、いつまでたってもわずかながら抵抗があり、完全に受け入れられないことがあった。それは、健康保険証の「扶養家族」の欄にコミチ(※お子さんのお名前)と僕の名前が仲良く並んでいることだ。
(中略)
ウンチやおしっこも自分でできず、牛乳をこぼしては「ウケケケケッ」と笑っているコミチを扶養家族と呼ぶのは「ウンそのとーりだ!」とあっさり納得できるが、社会的にみれば自分の立場もこのコミチと同じで「世話されちゃって養われちゃっているわけなのね」とあらためて思うと、おもわず心に冷たい北風がピューと吹きすさんでしまうのでした。


こういうことって、女性から見たら多分どうでもいいことで、「なに細かいこといってんの?器小さいねー」なんて言われそうですし、また言われそうとわかっているから、男の方もあまり口に出せなかったりします。でも実は心の奥でちょっと気にしてる、、、みたいな。


shufunohanamichi
p.45より引用



【漫画という表現は、とても良い!】

村上ジュンコさんの漫画があることで、とても読みやすくなっています。やっぱりすごいな、漫画の力。
主夫の生活というのは、特に男性にとっては本当に未知の世界。僕自身、主夫になる前までは主夫の生活ってものに対して、ほとんどビジュアルイメージがありませんでした。そういうイメージがほとんど無い人に対して何かを伝えるには、漫画はとても便利で、効果的ですね。主婦・主夫の経験が無い人にも、とてもわかりやすく情景が伝わるような表現になっています。

【テレビ取材ネタがすごい、、、】

著者は作中で「主夫という存在を世間に広く認知して欲しい」という理由で、テレビ取材を受けています。しかも依頼に応じたのではなく、自分からテレビ局に取材をお願いする手紙を書いています。なんて行動力だ、、、
また驚きなのが、その取材がバラエティー番組からで、

「知らない公園に子供と2人で行き、公園デビューする。子供がそこで新しく友達を作り、名前を10人覚えるという課題付き」

という、飛び込み営業サラリーマン顔負けの地獄のような企画。素人にむちゃくちゃさせるな、、、

まあこんな内容の企画でも、なんだかんだちゃんとこなした著者はすごいです。向き不向きがあるんでしょうね、僕なら絶対無理だと思います、、、

【“期間限定主夫”というのがちょっと】

主夫の気持ちをとても上手く表しているし、しかも読みやすいという本なだけにちょっと突っ込んだ話をしますが、3年という期間限定の主夫生活というのが唯一惜しい点です。僕はとりあえず最低10年はこの主夫生活を続けようと思っているのですが、こういう専業主夫の立場からすると、不安なのが

「このままずっと主夫やってると、完全に社会復帰できない」


ということ。この著者は30から3年間主夫をやったということなので、主夫生活が終わるのは32ですよね。まだまだ若いです、仕事人生をやり直そうと思ったらいくらでもできます。そもそも資格を取る為に主夫生活を始めたわけなので、資格を取ってまた仕事でバリバリ活躍できるでしょう。

しかし主夫として長期間生きていく人にとっては、仕事人生を大部分諦める必要があります。仕事のブランクもでき、年は取れば取るほど選択肢は狭くなり、35を過ぎると普通の企業では再就職すら難しくなります。専業主夫・主婦としてずっとやっていく人にとっては、この「諦め」ってのが結構大きなストレスになったりするので、この部分に関しては共感されにくいかもしれません。



いろいろ語りましたが、とりあえず「主夫ってどんな生活を送ってるの?」「主夫にちょっと興味がある!」って人にオススメだし、あと実際に主夫をやり始めたって人もきっとかなり共感できると思います!