学生時代、家庭教師のバイトにいったらヤバかった





今日はちょっといつもと趣向を変えて、昔話でも。ちょっと長いですが、時間ある時にでもどうぞ。

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オレは学生の頃、アルバイトで家庭教師をしていた。

家庭教師によくあるバターンで、とある家庭教師紹介会社に登録し、紹介されるまで連絡を待った。ある日、紹介会社の担当者からケータイに電話が入る。

担当者「もしもし、ムーチョさん。家庭教師先が決まりましたよ」

オレ「あ、ありがとうございます!」

担「えーと、先方の子供さんは障害をお持ちでして、ボランティア経験のあるムーチョさんなら、ということで紹介致しました。6才の男の子ですが、障害の為ほとんど喋れないので、なにか教えるというのではなくただ一緒に遊んであげるというのを親御さんは希望しています」

ベビーシッターみたいなものか。まあ遊んでいればいいだけならラクだしな。それに、ぶっちゃけ受験を控えた中学生とかだときついなとか思っていたから丁度いいかもしれない。
その時は、そんな風に気楽に考えていた。

そして親御さんとの顔合わせの為、先方の家へ向かった。
そこは東京湾の湾岸の高層マンションの一室で、マンションの入り口にはすごいセキュリティと、噴水と、コンシェルジュのような人がいた。

“おお、なんかすごいセレブなところにきちまったな、、、”

じゅうたん張りの廊下を通って、門に着いた。

顔合わせは、ほとんど問題なく終わった。男の子の両親と立派なリビングルームで話をし、家庭教師紹介の制度の説明、自分の自己紹介などをして終わった。お父さんは医者、お母さんは専業主婦ということだ。二人ともニコニコと笑顔で対応してくれて、オレも安心した。

ただひとつだけ、、、お父さんが一度も目を合わせてくれなかったのが気になった。

家庭教師が始まった。

正直、想像以上に大変だった。男の子はテレビにものすごい執着しており、なかなか話そうとしても会話をしてくれない。こちらからいろいろ話しかけたりして、なんとかちょっとコミュニケーションがとれる、というレベルだった。初めての日ということもあり、激闘の30分という感じだった。

しかし、そんなことは、この後に言われたことに比べたら全然どうでもいい。

約束の30分という時間が終わった後、男の子のお母さんとちょっと話すことになる。

お母さん「お疲れ様です、大変だったでしょう」

オレ「いえ、全然っす。むしろあまり力になれなくて、すいません。次はもっと頑張りますので、、、」

お母さん「いえ、気になさらずに。ありがとうございます」

オレ「あ、ほんとすいません、、、」

オレは確かにあまりに子供と会話ができなくて、恐縮していた。そして、そんな会話が続いた後、ちょっと沈黙になった。オレは

“あー、もしかしてやっぱり不満に思ってるのかな、、、?”

と心配したその矢先、お母さんが突然

「ムーチョさんって、かっこいいですよね」

、、、

、、、

え、、えええ???

会話をぶった切って出たあまりの突然な台詞にうまく切り返すこともできず、沈黙してしまった。

お母さん「よく言われません?かっこいいって」

オレ「あ、、、いや、、、いえ、そんなことないですよ!」

お母さん「そうですか、、、また、来てくださいね

帰り道、いろいろ考えてしまった。普通、ほぼ初対面の人にそんなこというか?しかもなんか言い方が、、、これだけ聞くと、なんだかエロマンガのシチュエーションのようだが、実際はそのお母さんも結構な年だし、正直オレがテンション上がるということは全く無し、むしろ次行くのがとても不安になってしまった。

2回目も、様子が変だった。
オレが走り回ったり、騒いだりする男の子と悪戦苦闘している中、お母さんは急に離しかけてくる。

お母さん「あの、、、」

オレ「はい?」

お母さん「あ、いや、なんでもないです、、、」

オレ「あ、、はい。(、、、?)

そしてしばらくしてまた

お母さん「あの、、、」

オレ「はい、なんでしょうか」

お母さん「いや、すいません、ほんとになんでもないです、、、」

いや明らかにおかしいよ。

お母さんを良く見てみると、なんだかたまに挙動不審な動きがあったりする。この頃から、ちょっとこの人、病的かもしれないという疑問を持った。しかしただの家庭教師としてはどうすることもできないし、まあちょっと変な人はいるだろう、とあまり深く考えずにいた。

そして3回目、起こった。

お母さん「どうしてこんなにお金を払わないといけないんですか!!!」

それはいつもの30分の家庭教師が終わった後の会話だった。お母さんはダイニングテーブルを叩きながら、物凄い剣幕でオレに怒鳴りつけてきた。

オレ「いえ、ですからこれは最初に説明した通りでして、、、」

お母さん「お金返して下さい!返してください!」

オレ「大変申し訳ございません。ただ契約上のやり取りに関しては、直接紹介会社の方に問い合わせて頂いて、、、」

お母さん「どうしてなんですか!!なんでこんな、、、もう嫌だぁ!!」

オレ「私の力が及ばず、本当に申し訳ありません、、、」

お母さん「もういい。今日限りこなくていいから!!」

オレ「すいません、、、」

最後、お母さんはワンワン泣いていた。突然泣き出した人を目の前に、オレはどうすればいいのかわからなかった。
正直、凹んだ。やっぱりオレの対応に満足していなかったのだろう。しかもたったの3回でクビとは、、、酷く鬱だったが、とりあえず紹介会社に連絡をした。

オレ「はい、ムーチョです。すいません、こういう経緯で、今日限りこなくていいって言われました、、、」

すると、担当者の人が

担「あー、、、そうですか、、、わかりました。いえ、気にしないで下さい。

実は、、、

あなたがこれで4人目なんですよ

そういうことは早く言え

結局その後、連絡はない。紹介会社には

「普通の受験対策の家庭教師でお願いします!」

と念を押し、他の学生を紹介してもらった。

紹介会社のテキトーさにも腹が立つが、やはりあのお母さんの錯乱っぷりの印象には敵わない。障害を持った子供の育児で、ノイローゼ気味だったのだろうか。なんにせよ、ただの大学生の家庭教師には荷が重過ぎる仕事だった。

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長文にお付き合い頂いて、ありがとうございました。