式根島 2日目

式根島、到着

2等席の明かりがいきなりつき、目が覚める。

今、何時だ?時計を見るとまだ朝の5時。早すぎじゃねーか!しかしアナウンスを聞くと、どうやら一番初めの島、大島に到着したとの事。確かにこうやって明かりつけてもらわないと起きられないが、、、仕方ないか。

しかし明かりは仕方ないとしても、なんだこの寒さ。なぜ夏なのに朝っぱらからこんな寒さで苦しまないとならないのだ、、、原因はもちろん、船内のエアコンの効きすぎである。特に2等席は船の最下階にあるせいか、冷たい空気が下へ下へと流れ込んでいってすごい寒さになっている。毛布がないと本当に寝られない。


オレはしっかり目が覚めてしまったのでひげを剃ったり、コンタクト入れたりと身支度を整えて、デッキへ出る。船は止まっていて、港がみえた。うわー朝日がキレイだー、、、これが見れたから、よしとしよう。

船はその後利島、新島へを経由し、式根島へと向かった。8時過ぎ、式根島の港へ無事到着。オレの自転車も無事到着。自転車の状態をチェックした後、オレは島の中心部へ向かってこいでいった。 


石白川海岸

式根島に着いて、初めて訪れた海岸。坂道を下っていくと、段々と見えてくる水平線。空は、朝のすがすがしい太陽が降り注いでいる。うー、まさに絶景!オレは浜辺まで降りていき、すぐにサンダルを脱ぎ捨てて海に足をつけた。冷たいけど、気持ちいい!しばらく、そこでぼーっとしてしまった。

うるさい車の音も、目が眩むような看板広告も、ここには全くない。ただあるのは島中に響き渡るせみの音、波の音、そして海、空。最高だ。






今すぐにでも海に飛び込みたいところだがまだ早朝、時間も体力もある。海でゆっくりするのはもう少し島の見物をしてからにしよう。オレは乾いた砂で足を乾かしてから、自転車に乗った。 


東要寺 

オレは自転車の旅に出る時は手首に数珠をつけている。これは四国遍路をした時の名残りなのだが、普段全く信仰心がないオレでも、こういう時にだけその気持ちがよみがえる。

実際、自転車の交通事故は本当に多い。いつでも無事に、という願いを込めて数珠をまく。そんな思いがあったからか、次はなんとなくこの島唯一の寺、東要寺にいってみたくなる。

石白川海岸からは近く、ものの5分で着いてしまった。というか、この島自体オレが想像していたよりもずっと小さかった。15分もあれば、島の端から端までいけてしまう。だから「どこどこから近い」というこの島での表現は、「ほんっとうに近い」のである。
東要寺は、清潔で質素な寺だった。オレの感覚では珍しいのだが、この寺には賽銭箱がなかった。オレは寺に向かって 

「宗派は違うかもしれない、っていうかよくわからないけど、仏さんを大事に思う気持ちはあります。この旅に安全と幸を」

とお願いした。その願いが通じたのか、この後とても素敵な出会いをすることになる。

オレはしばらく寺を歩き回った。歩き回る、といっても狭いので数十秒の話なのだが、ふと気になる光景が目に入り、足を止める。この寺の隣には墓場があるのだが、まあこれ自体はよくみる光景である。しかしその墓場が、オレがよくみているような墓場とは少し違う雰囲気をかもしだしているのだ。普段なら目もくれず立ち去るところだが、オレは墓場の方に歩いていった。


立ち並ぶ墓の間を歩き回りながら、驚いた。ここにあるどの墓にも花束、水が供えられているのだ。そして墓石はまだ2、3日前に洗われたばかりのようにきれいなのである。派手ではないが、不思議な光景だった。墓場が、色とりどりの花で飾り立てられている、、、オレが東京の墓で受ける「グレーでダーク」な印象は微塵も感じなかった。


よくみると造花もあった。造花だから長持ちするのか、とも思ったがそれにしてもその造花も新しい。半年、一年も経ったら雨やホコリなどであそこまできれいな状態ではないだろう。オレは気になったので、丁度墓参りに来ていたおばあさんに話しかける。

「こんにちは、ちょっとお尋ねしたいのですが、ここのお墓ってどれも手入れがされてますよね、いつもこうなんですか?」

おばあさんは墓を洗う手を止め、快く答えてくれた。

「これが私らおばあちゃん達の朝のお勤めなんだよ。若い人は忙しいからね、こうやって年よりがご先祖様の供養をするんだ」

「それにしてもどれもきれいですよね。失礼ですが、普段どの位来ていらっしゃるのですか?」

「1日、2日おきくらいかな」

すごい。やっぱりそうなんだ。そしてこれはこの人だけじゃない。オレがその時訪れていただけで、そんなに広い墓場ではないのに他に2、3人墓参りに来ている人がいた。

「こうやって島の人は親から親、孫から孫へと繋がっているということを大事にしてるんだよ。東京の人達とちがってここは墓も近いしねえ。

それに昔は漁師がたくさんいてね、海の安全をご先祖様に願ったんだよ。海では突然天気が変わったり、なんて危険もあるからね。しかしあんたよく気がついたね。観光客でこの寺に来る人はもうちょっと年いった人ばかりなのに」


、、、まあオレも健康体ならそもそも一人で来てないし、きっと今頃寺なんかシカトで海で女の子とジェットスキーでもやっているのだろうが。

そしておばあさんはよく「ご先祖様を"たっとぶ"」という言葉を使っていた。尊ぶ(とうとぶ)ということなのだろうか。先祖を尊ぶ、か。オレは一年に何回くらいその事について考えているだろう。

その他、いろいろなことを聞いた。ついこの間TVで『式根島の美味しい宿』みたいな特集があったそうだが、なんとこのおばあさん民宿をやっているらしくそのTVの取材を受けたという。
また、若い人はやはり東京に出て行ってしまうらしい。そもそも高校がないこの島(隣の新島か神津島にはある)、職も少なく、漁が盛んではなくなった今は民宿経営などの観光業くらいしかないそうだ。若い人が暮らすには、厳しい所だ。

そもそも職があるなし以前の問題で、カラオケ、マック、ゲーセン、パチンコ、ショッピングモールといった若者が普通欲するものが一切無い。ここで中学まで育った子供と、渋谷を拠点に遊んでる中学生では同じ東京都民といえど全く違う価値観を持って育つだろう。どちらがいいのか、、、難しいところだが。

30分位は話しただろうか。オレは最後、おばあさんに礼をいった。 

「いろいろお話聞かせていただいてありがとうございました。これからまたチャリで島をぐるっとまわってこようかと思います」

「日中、日を浴びすぎるとそれで熱出すこともあるからね、体に気をつけな」

オレは、もう一度寺で手を合わせ、寺を去った。


"Life is..."

式根島港へ着く。しばらくぼーっと海を見ていたがふと景色がよさそうな堤防を発見。あの上に登りたい、、、チャリを走らせると、壁に"立ち入り禁止"と書かれている、、、見なかったことにして、堤防を登り始める。

テトラポットを伝って上にあがっていくのだが、確かに足を滑らせたら結構大変なことになるな。まあそれでも海岸ってどこでもこんな感じなので、気にせず登る。

そこで突然、こんな落書きを発見。





この島唯一(?)の落書き。それにしても、絵になってるなあ、、、
写真の腕がないのが悔やまれる。





「人生で大切なのは、バランスだよ」というような意味だろうか。むう、確かに。


足付温泉で混浴

次に訪れたのが「足付温泉」。ここには天然の温泉が湧き出ていて、タダで24時間入れる素晴らしい温泉だ。しかも天然だから、露天風呂!しかも天然だから、混浴!うん、素晴らしい温泉だ。ここは沸き出るお湯が熱すぎるので、海水で温度調整している。だからいく度に熱かったりぬるかったりする。そこがまた天然ぽくて良い。オレは期待を込めて温泉へと歩いていく。さあ、、、いるかな?いるかな?



いたーーー!女の子2人!
(写真取れなかったのが残念)


いやもちろん水着ですよ。でもそんな些細なことはどうでもいいんです。「混浴」という言葉に、ロマンがあるのです。そして同じ風呂の間柄として、一気に仲良く、、、ムフフ。オレは何食わぬ顔して入った。


、、、。


、、、。


、、、何故だろう、温泉につかってるのにリラックスしない。プールだと全然オッケーなのに、なぜか同じ風呂に入っていると考えると、落ち着かない気分になる。ええい落ち着けムーチョ!こんなものは温かいプールみたいなものだ!

、、、結局女の子2人はそのまま湯からあがってしまいました。ダメダメじゃん、オレ。ま、仕方ないか、

オレ、病気だしー(決め台詞)


民宿「かねやま」 

さっき墓場であったおばあさんが民宿を経営しているという話を思い出した。オレはテントを持ってきているのでそもそも野宿を予定していたのだが、あのおばあさんの民宿なら泊まってもいいかな、と思ったのである。早速民宿「かねやま」まで向かった。

「ごめんくださーい」

すると、女将と思われる女の人が出てきた。

「突然で申し訳ないのですが、もし空き部屋がありましたら一泊させていただけないかと、、、」

「あ、申し訳ございません。今、家の事情でお休みさせていただいておりまして、、、明後日からまた営業を再開する予定なのですが、、、」

明後日、、、そんなに長くはいれないな、、、

「いえ、大丈夫です、わかりました。ありがとうございます。」

オレは先ほど墓場でおばあさんに会ってここを知った旨を伝え、礼をいって去った。

今更他の民宿当たる気もないしなあ、今日はやっぱり野宿だ。
オレはこの島でこの時期やっている唯一のキャンプ場、大浦キャンプ場へとチャリを走らせた。


大浦海岸のキャンパー

ここのキャンプ場は海岸のすぐ隣に位置していて、水回りやトイレも完備、しかも高いところにあるから安全というかなり条件のよいキャンプ場だった。しかもここもタダである。オレはキャンプ場を借りる手続きだけして、適当な場所にテントを張る。





木陰をゲットすることはできなかったが、なかなかよい場所。





さ、まず一日チャリこぎ続けて汗でびっしょり濡れたタオルやTシャツの洗濯でもするか。オレはキャンプ場の水場に歩いていった。
するとそこにはなにやら一生懸命魚を三枚おろしにしている同い年くらいの男がいた。三枚おろし、オレにはできないな、、、すごいな。

「こんにちは、すごいですね、三枚おろし。釣ってきたんですか?」

「いや、銛で獲ったんですよ。」

モ、、、モリ!?

「まじっすか、、、とれるもんなんですね、、、」

「ええ、あっちの岩場越えた辺りにいっぱいいましたよ」

すごい、、、この島で釣りをしている人はたくさんいるが、銛で獲ってる奴は始めてみた。もちろんその銛は自前らしい。

「今日は、刺身です」

う、、、羨ましい、、、


テントの夜

その夜は、結構厳しかった。なにが厳しいって、体調が一気に悪くなったのである。街灯もなにもない真っ暗な場所で、テントの中の懐中電灯の灯りひとつで薬を探しながら、ひーひーいっていた。今、ピンチになったらそれこそ誰も助けにこないな、、、

そもそも、この島には病院がないのだ。診療所がひとつあるだけで(まさにマンガ『Dr.コトー診療所』の世界である)、急患などは隣の島まで臨時ヘリが出るという。その臨時ヘリとやらに乗ってみたい気もするが、金かかるんだろうなあ、、、そんなことを考えながら、蒸したテントの中で突っ伏していると、もうひとつの試練が降りかかってきた。
メッシュでできたテントの屋根を通って、落ちてくる水。


、、、雨だ。 


まさに泣きっ面に蜂である。必死の思いでテントの外に出て防水シートをかける。オレのテントは高校の頃に買った安物なのでこのシート、雨は通さないのだが、風も通さない。つまり、夏にシートをかけると、中は天然サウナになるのである。

「ヴァアアアアァァァァアツイイイィィィィィ、、、、」

オレは思考回路をオフにして、身動きひとつせず横たわっていた。

幸い、雨はしばらくして止んだ。もう勘弁してくれ、カミサマ。

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