レインボーブリッジへ!



会社を休んだからといって、すぐに劇的に体調が良くなるわけではない。やはり波があるのだ。先週末なんか体調的に低い波だった為、家にこもって一日中プレステ2やってるなんて相当不健康な日々を送っていた。しかし、天気が良くなるにつれて体調も良くなってくる。今日はかなり調子良かったので、何かしたくてうずうずしていた。

「あー、ヒマー、、、体動かしてー、、、」

そして、突然チャリでお台場に行くことを思い立つ。オレはチャリが趣味で、元気な頃はよく近所にフラフラ遊びにいっていた。学生時代には富士山や北海道、四国一周など長旅にもいったことがある。もちろん今は長旅する体力はないが、都内なら、、、ということで、少し遠出してお台場まで行くことにした。

お台場には過去何回か行ったことがあるが、かの有名なレインボーブリッジは通ったことがなかった。そういや、こないだTVでレインボーブリッジを歩いて渡っている人がいたなあ、、、よし、今回はあそこを渡っていこう、走りながらそんなことを考えていた。

都内は走りづらい。車が多くて危険だし、騒音と排気ガスの容赦ない攻撃が延々と続く。歩道でも人と自転車を常に意識しながら走らないといけない。久しぶりの都内ツーリングで、レインボーブリッジのふもとに着く頃にはすでに憔悴しきっていた。

「ハア、、、ハア、、、やっと着いた、、、もう車道は嫌だ、、、」

レインボーブリッジも車道だが、オレの勝手なイメージで自転車に乗りながら眺めのいい景色を見つつ、人通りの少ない道を快走できると思い込んでいた。

しかし。


『自転車乗り入れ禁止』


うそだろ、、、ここまできたのに、、、もう今更迂回して別ルートに行く気力はない。オレはガードレールに座って、地図を見ながらぐったりしていた。するとその時、

「レインボー?」

突然話しかけてくるおっさんがいた。服装からして、どうやらレインボーブリッジの警備員のようだ。どうやらオレがレインボーブリッジにいけなくて途方に暮れているのが伝わったようだ。

「そうなんですよー、自転車で渡れないって知らなかったもんで」

「そう、自転車はだめなんだよ。ここに自転車置いて歩いて渡ったら?結構そういう人多いよ」

なるほど、オレみたいな奴は結構多いんだな。せっかくここまで来たんだから歩きででもいくか、迂回する気もないし。

「じゃあそうします。チャリはここでいいですか?」

「いいよ。歩いて30分くらいだよ。あそこからエレベータ乗ってね」

親切な警備員の案内により、オレはレインボーブリッジを渡ることになった。
さて、結論から言わせてもらうと、


レインボーブリッジは歩きで渡らないほうがいい。


あの警備員には申し訳ないが、およそなにが楽しくてあそこを歩きで渡るのか全くわからない。むしろ歩道なぞ作るべきではなかった。騒音は2階建てになっている橋の中で反射、増幅されてものすごくうるさいし、トラックなど大型車両が多いからこれまたものすごい排気ガスの量、そしてその振動で常に橋が揺れている。

ものの5分もしないうちに頭が痛くなってきた。そして期待していたいい眺めは、網がみっちり張りめぐらされていて全然きれいに見えない。あるのは、ただ延々と続く道。こ、これが30分も続くのか!? 


渡り切った時は、症状がぶり返しそうな程気分が悪かった。オレは休む為、コンビニでお茶を買い、橋のふもとにある人口ビーチへと向かった。

ここは人口とはいえ、結構のんびりできるところではある。階段に腰掛けると、ある異様な光景が目に入る。浜辺で、おっさんやおばさん達がなにやら砂を掘りまくっているのである。よくみると、おっさんの近くには大量の貝が山盛りになっているではないか。

もしかしてここ、潮干狩りできるのか!?

おかしい、こないだネットで潮干狩り情報を集めていた時もお台場のことは載ってなかったぞ、、、?とりあえず、聞いてみることにした。

「あのー、すいません」

一人のおっさんに話しかける。そのおっさんは既にざっと2、3キロの貝を獲っていた。

「はい?」

「ここ、貝たくさん獲れるんですねー、大漁じゃないですか」

「そうだよ、おれも今日は散歩に来ただけなんだけど、30分くらいでこれよ」

「すごいですねー、ここって潮干狩りの場所なんですか?」

「去年はここら辺は禁止だったけど、今年からできることになったんだよ」

なるほど、最近解禁された場所だからあまり広く知られていないのか。

「オレもちょっとやってみようかな」

「やんなよ。道具もなにもいらねーから」

ということでオレはコンビニでビニール袋を何枚かもらってきて、いきなり潮干狩りを始めた。
潮干狩りなんて、何年ぶりだろうか。というか、やったことあったっけ?オレはサンダルを脱ぎ、素手でがつがつ掘っていった。すると、でるわでるわ、面白いほど貝が出てくる。砂から時折りピュッと潮を吹くのがわかるのだが、そこには貝がいる証拠。 

「フフ、ばかめ、自己アピールしたがお前の最後だ」(独り言) 

レインボーブリッジで調子悪くなっていたがそんなことはとっくに忘れ、一心不乱に掘り続けた。
だんだん人が集まってくる、中でも多かったのがカップルだ。きっとお台場にデートに来て、何気なくこのビーチを通ってはじめたのだろう。しかし掘り方が甘い。

「そんな服に泥が付くのを気にするように掘ったってなんも獲れねーよ。これはまさに貝と男の真剣勝負、hide and seek。チャラチャラ着飾ってるカップルはお呼びじゃねーんだよ!女だけ置いて、去れ!」(独り言) 

30分ほど経った頃、オレの傍には大量の貝が山になっていた。さて、問題だ。


この貝、食えるのだろうか?


確かに獲っている人は多いが、ここはお台場、東京湾だ。ひいき目にも「綺麗な海」とは言い難い。しかも掘っている手についているのは、砂というより泥。波打ち際にはタバコの吸殻やビニール袋なども落ちている。 さっきのおっさんが近くにいたので聞いてみる。 

「あのー、これだけ獲っといてなんなんですけど、この貝って食えるんですかね?」

「ああ、大丈夫だよ。この近所に住んでるおばちゃん達も獲りに来るらしいよ」

健康にうるさいおばちゃん達が獲りに来るなら、大丈夫だろう。オレはこのおっさんが袋を持っていないことに気づき、さっきコンビニでもらった袋を一枚あげた。このおっさん、他にもいろいろなことを教えてくれた。 

「大潮の時はもっと人がいるんだけどね、今日みたいな小潮の時の方が逆に獲れるんだよ」

「そのペットボトル、空か?それにここの海水入れて持って帰るといい。貝の砂抜きの時使えるぞ」



ありがとう、おっさん。オレはおっさんに何度もお礼を言って最後に「お疲れ様でした」といって、海岸を去った。 


帰りはレインボーブリッジを電車で渡った(もう二度と歩かない)。