8日目 ~遍路9回目遍路~

スタート位置:高知・南国市

札所:6ヶ所

30番 善楽寺

31番 竹林寺

32番 禅師峰寺

33番 雪蹊寺

34番 種間寺

35番 清龍寺





最悪の天気

朝からすごい風。時々ザーーーーーーッと大雨が降る。もういい加減この天気はどうにかして欲しい。天気予報を見ると、これは明日まで続くそう。ハア、、、

これからまた海岸線を走るのに、景色のいい海は見れなそうだ。体中筋肉痛だけど、8分目くらいでがんばろう、と自分に言い聞かす。



天気はこの後、雨は少なくなり、ほとんど降らなくなる。しかし、むしろ最悪だった。ものすごい風なのである。もう全然前に進まない。時速は10km/hくらい、ほぼ普段の半分、下り坂でもペダルをこがないと止まってしまうくらいである。

風は、じわじわとやる気を奪う。だるくなってくる。雨も嫌だが、風も嫌。雨ニモ風ニモ負ケテマス。



天気予報では、明日も降水確率90%。もともと快適なサイクリングを求めて四国に来たのに、なんだよこの天気。もう修行とでも思わなければやってられない。



不安定な天気は、不安定な気分にさせる。31番竹林寺では道に迷いまくってかなりイライラした。道をいったり来たりしながら「ちくしょう、ちくしょう」とか連発してた。今思うとかなりウケるが、この時は真剣に不安だったのだ。





錦札





団体バス遍路さんの様子。はじめは違和感あったが、もう慣れまくっている。





次の禅師峰寺では、おばちゃんが突然話しかけてきた。オレも挨拶すると、



「一番からまわっとんの?」

「はい」

「88全部まわるの?」

「はい」

「ちゃんと全部まわれる?がんばれる?」

「え、、、あ、はい」



なんだかおせっかいなおばちゃんだ。しかもそんな偉そうに、あんたがたはバスでまわっとるんだろうが、とちょっとムッとする。すると

「がんばるっていう人には、これあげてるのよ」

といって、バッグの中から封筒をだした。もしかして、現金!?と思ったら、納め札だった。しかし、それはあの100回まわったら持てるという錦の札。はじめてみた。珍しいものをもらい、さっきの苛立ちはどうでもよくなる。

「お守りにもってきや」

といい、金色の札もくれた。なんか得した気分。しかし、なんでこんなものを持っているんだろう。



盗難?

チャリをこいでいて、目の前のハンドルの上がちょっとスッキリし過ぎているのに気がつく。



ライトがない。



慌ててチャリを止め、しっかり確認する。もちろんはずした覚えはないし、自転車をぶつけた覚えもない。しかし、ない。

よくみると、もぎ取られたような跡がある。チャリのライトはボタンを押すと簡単に外れるようになっているのだが、それをせずに、思い切りひっぱってとったような感じだ。

盗難なのか。誰がライトなんて盗るんだ。しかし確証がもてないし、そんなことを考えるとブルーになる。オレはあまり深く考えるのをやめ、新しいライトを買うため、自転車屋を探した。

チャリがダメになったら、スケジュール的にも、意識的にも、この旅の続行は不可能だろう。大切に扱わなければ。





35番の通夜宿(つやど)

35番で寺のおばちゃんに寝れるところを聞くと、この寺で寝れるというではないか。先客が二人いたが、頼みこんでおじゃまさせてもらった。

この二人はカゲタニさんとカタヤマさんという。カゲタニさんは40過ぎくらい?の遍路で、なんと今回9回目だそうだ。はじめは信じられなかったが、話を聞いていくうちにすごい人に思えてきた。

カタヤマさんは25才の兄ちゃん。頭に迷彩のバンダナを巻いていた。彼は今日で遍路はとりあえず一区切りするらしい。これは「区切り打ち」といって、一度に全部まわらず、何回かに分けてまわるというものだ。



ここ、35番の寺は山の上にある。オレはチャリをふもとに置いて登ってきていたため、必要なものを取りにいったり、買いだしにでたりしなければならず、山を下りる。カタヤマさんに「ついでなんで、なんか必要なものあったらいってください」といったらパンとタバコを頼まれた。

気軽に「いってきます」なんていったものの、かなり辛かった。帰りなんか真っ暗で、チャリのライト一つでひたすら登った。自分でもよくやったと思う。



3人で飯やら果物やら食べながら夜11時くらいまでずっと話してた。特にカゲタニさんの話が興味深い。さすが遍路9回目の重みがある。
この人、托鉢をしながら遍路をしているそうだ。寺の近くの家を訪ねていき、「お経をあげさせてください」と聞いて、小銭をもらうというものだ。少ない時は10~20円、多い時は1000円くらいもらえるのだそうだ。大体2000円も貯まれば一日暮らしていけるらしい。金がなくなったら郵貯で下ろすオレの遍路とは大違いだ。



そして、「通夜宿」のことも教えてもらった。通夜宿とはこういった寺が好意で宿を提供してくれるところだ。何回もまわっているので、めちゃめちゃ詳しい。全部地図にメモった。



遍路では途中であったお遍路さんとお札を交換する習慣がある。いわば、名刺がわりになるのだ。オレはカゲタニさん、カタヤマさんとお札を交換した。カゲタニさんのお札は赤色だった。金色や錦に比べるとまだまだ、と思いがちだが、やはり誰のだか分からない札よりも、実際に出会った人からもらった札の方がご利益があると思う。



カゲタニさんの話を聞いてから、遍路のイメージが変わってきた気がした。オレは計画を立て、綿密に進むのが失敗しない方法だと思っていたが、この人はそういう事はしない。簡単にいうと、いきあたりばったりなのだ。でも、それが遍路の本来あるべき姿なんだろう。オレはコースありき、ととらえていたが、もともとは信仰心ありき、なのである。急いでまわっても何の得もない。



遍路9回目というと修行者というイメージがあるが、カゲタニさんはかなり俗っぽく、毎朝かかさずコーラを飲んで、スポーツ新聞をコンビニで立ち読みする。それに関西出身らしく冗談も言うし、毒も吐く。しかし、そんな振る舞いのなかに、なにか魅力的なものを感じた。



カタヤマさんは初めてで、1番から歩いてきて今日で13日目だそうだ。オレが遍路をはじめてから7日目だから、ほぼ倍か。チャリで走ってるのに、たったの倍?そんなものなのか?カタヤマさんのお札の裏にはメールアドレスが書いてあったので、遍路を無事に終えて家に帰ったらメールを書く約束をした。



そのうち眠くなってきたので、畳の上に寝袋を敷いて、寝る。

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