4日目 ~難所、焼山寺を行く~

スタート位置:徳島・神山町

札所:3ヶ所

12番 焼山寺

18番 恩山寺

19番 立江寺





昨夜の事2

今日も前日と同じく、昨日の夜のことから書きます。昨日は深夜12時頃に一回、そして朝の4時頃にもう一回起こされました。一回目は地元の花火集団。男女3対3くらいのグループで、近所の迷惑も顧みず、

『ひゅーーーー、、バン!』

『ボッボッボッボッボッボッ!!』

とかすげーうるせーの。ああ、うるさい!!

しかも男が

「やっべー!おもしれー!」

とか叫んでるし。「お前の頭の中が面白いわ」と心で悪態をつきつつも、何もできないので無視して寝る。ああ、、本当に、今日こそは耳栓を、、、



二回目は水のしずくが足にかかってるみたいな感触があり、目を覚ます。「もしや、、、」と思ったがその通りで、夜暑くてテントの雨よけカバーをはずしていたのでメッシュ屋根から雨が漏れていたのだ。まだ外は暗いが、慌ててカバーをかける。何とかカバーはかかったが、今度は



「バラバラバラバラバラバラ、、、、」



というテントに落ちる雨音がテント内に響き渡り、うるさくて眠れない。ああ、、本当に、本当に、今日こそは耳栓を、、、





初めての難所、焼山寺

朝は雨が止むまでテントの中で待機。朝からブルーである。テントの中だけすごい暑いし、ムシムシしてるし。雨が上がり、テントについた雨しずくをはらっていると、昨日の3兄弟の次男がやってきた。

「これ、どうぞ」

なんと、おにぎりである。もうブルー気分は一気に吹っ飛んだ。何回もお礼をいって、見送った。なぜいつも来るのは次男なのだろう。まあいいけど。

テントを片付けて、川の家の人にお礼を言いにいく。もうこんなたくさんお接待受けちゃって、本当に感謝。絶対に旅の思い出として覚えておきます。



準備は全て整い、12番焼山寺に向けて出発。すぐにものすごい便意をもよおし、出鼻をくじかれる。ああああああトイレにいきたいいいい。けどまわりは山ばかり。民家すらない。東京じゃこんなことはないのに、、、トイレもいける時にいっておかないとな。

焼山寺までの道のりは険しかった。アップダウンを繰り返し、だいぶ登ったな、と思ったら一気に下ってしまう。山の上を目指しているので、下ってしまうのはとても損なのである。雨もひどく、かなり精神的にこたえた。これで「一番楽なオススメコース」なのか、、、きっと評判の悪い「梨の木峠」なんていってたら死んでたな。

山に近づくに連れ、だんだん坂の勾配が急になってくる。もうすでにチャリをこいで上がることができずに、押して登っている。自転車は、くだりはなんとも快適な乗り物だが、のぼりは無用の長物と化す。

"チャリさえなければ、、、"

途中の「上杉庵」というところで、ギブアップ。ここでチャリを止め、鍵をかける。盗難されたら、、、という心配が頭をよぎるが、こんな山奥でチャリを盗む人もいないだろう。オレは歩きで登ることにした。





ジゴクの12番への道中。





遍路ツアーの団体さん

いざ焼山寺へ、の前に上杉庵で一休みしていると、一人のお坊さんが話しかけてきた。このお坊さんはどうやら年配の方向けのお遍路ツアーのガイドをやっていて、マイクロバスでここまで上って来たようだ。

オレはここにくるまでに水を飲みきってしまっていたので、聞いてみた。

「ここ(上杉庵)に水ありますかねー?なくなっちゃって」

「ん?水がいるのか、、、水ならあるぞ。欲しいか?」

といってマイクロバスのトランクをごそごそやっている。

これはお加持水だ。お大師さまにまつわるありがたい水なんだよ」

といって、小さなプラスチックの入れ物を渡された。

「接待だよ」

これは8番で会った"ベテランおじさん"が若奥さんにあげてた容器と似ている。なんだか「お加持水」とはとても有名な水のようだ。

まあなんにせよありがたい。オレは礼をいい、坊さんは車の方へいった。坊さんは、一度運転席に乗ったものの、また出てきて「これも」といって2種類のニッカ飴をくれた。一つは坊さんからで、もうひとつはバスに乗っていたツアーの人かららしい。何度も礼をいって、バスが見えなくなるまで見送った。



オレはチャリで進んでいるので、昔ながらの「遍路道」を通らないことが多い。この「遍路道」はもちろん歩き用の道なので、チャリではこの上なく走りにくいのだ(というか走れないところも多い)。開発とともに舗装されてきているところも多いのだが、こういう山登りの時は歩くので遍路道を通ることになる。




チャリでは通れないケモノ道。





ここ、焼山寺でもそういう山道を通ったのだが、本当にきつい。ずっとチャリをこぐだけと思っていたので、靴は軽さがウリのランニングシューズを履いている。もちろん登山にはめちゃめちゃ向いてないし、しかもほとんどメッシュでできているので雨が降ると100%しみこむ。着ている白衣も汗でぐっしょり、ずっと息は切れたまま、体のいろいろなところで不快感を味わいながら、もう最後は考えることをやめてひたすら惰性で登っていた。




焼山寺の入り口は、モヤーっとした霧がかかっていて、おごそかな感じがした。階段を上っていると、さっき上杉庵で会ったマイクロバスの団体さんがいた。お坊さんに会釈をする。




焼山寺にいたイヌ。癒される。





しばらくすると、ものすごい雨が降ってきた。これまでも降ったり止んだりを繰り返していたのだが、今度のはひどい。最悪である。もう歩くのが嫌で、しかも雨はもっと嫌だったので、さっきの団体さんに頼み込んで上杉庵までバスに乗せてもらうことにした。

バスの中では(半分予想通り)いろいろな接待を受ける。団体さんはほとんど60過ぎのおじいちゃんおばあちゃんだ。おにぎり2個、ゆで卵、お茶1リットルがはいったペットボトルをもらう。聞くとこの団体さん、もう2、3回遍路を回っているらしい。すごいな。きっとオレみたいな遍路はもう何人もみているのだろう。こんなバスに乗せてもらって、「こいつはまだ根性がねえな」とか思われたりしているのだろうか。すいません、その通りです。





全く同じ道を戻る

上杉庵で降ろしてもらい、仕度をしていると下からチャリのオッサンが上がって来た。ヘルメット、チャリ用スパッツ、グローブ等など、かなり「チャリやってます」というイデタチ。雨も相変わらず降っていたし、お互い疲れているようだったのでオッサンと一緒にしばらく座り込んで話す。

このオッサンは埼玉出身、つい最近会社を辞めて、お遍路に来たらしい。なんだか事情が複雑そうであまりつっこんで聞けなかったが、きっとよほどなにか思うところがあったのだろう。オレは焼山寺の様子を伝えて、別れる。



この後は、今まで走ってきた全く同じ道を戻る。これが一番近道なのだが、しかしやる気をなくす。またアップダウンの道を大雨の中、走る。今日はコンタクトをつける場所がなく、ずっとメガネのままなのだ。そのメガネに雨があたる、あたる。雨の粒だけならまだしも、チャリの前輪の泥ヨケでよけきれなかった泥が顔めがけて飛んでくる。もう口の中はジャリジャリ、靴下はグチョグチョ、また思考回路をオフにして走る。



午後1時頃に今朝の場所に戻る。朝7時に出発したから6時間かかったことになる。13番⇔12番で往復でこんなものか?





町行く人に撮ってもらう。一人旅だとなかなか自分の写真が撮れない。







20番のふもとで

コンビニの裏で昼飯を食って態勢を立て直した後、猛突進。一気に18番、19番とまわる。そしてそのまま20番へ。

20番のふもとで木をけずる工場で働いているおっちゃんに話を聞く。20番を登るだけで1時間半はかかるらしい。この時、5時。日も落ちるし、やめとこうと即断。すぐ近くにテントがはれるいい公園があると教えてもらい、そこへ向かう。

いってみると、確かにレベルは高い。トイレもあるし、水道もあるし、ちゃんと芝生は整備されてるし、しかもすぐ隣に川が流れていて、気持ちがいい。遍路さんはよくこの川で洗濯したり行水したりするらしい。さっそく洗濯をしにいく。川で洗濯なんて、生まれて初めての経験かもしれない。向こう岸に、鮎釣りをしている人がいた。

「釣れますかー!?」

と大声で聞くと、

「だめだねー」

と返ってくる。服を一枚一枚水洗いしながら、ボチボチ会話を続ける。そのうち、釣り人の竿がピクッと動く。あっという間に一匹釣った。すげえ。ちょっと感動。

「やりましたねー!」

「いやーでも最近はあまり釣れんよー」

という。なぜ?と聞くと

「上流にダムができてなー、汚れちまった。ダムに溜まった腐った水が流れてきよる」



、、、その水で洗濯しているオレって、、、




やる気をなくして引き上げる。近くの売店で「サトウのご飯」を温めてもらい、インゲン、芋の揚げ物とごま豆腐をおかずに買って、テントに戻る。





熱いので、カバーは外している。





洗濯物を公園のベンチに並べて干し、一番目立つところにオレの白衣をかける。背中に大きな筆字で「南無大師遍照金剛」と書かれたこの白衣、四国の人が見たら一発で遍路だとわかる。ホームレスや怪しい人だと思われないためにも、遍路であることをアピールするのは大事なことなのだ。

テントに戻って日記を書いていると、雨がまた降ってきた。もう天気にはうんざりである。疲れてて、もう洗濯物を取りこむ気もしない。どうせ取りこんでも乾かないし、むしろテントの中が蒸れるので、外に放置する。



またテントの近くで花火が始まった。河原にテントを張るからいけないのか、、、まあやってもいいからロケットと打ち上げだけはやめて欲しい。テントの外から聞こえてくるのは、女の子がはしゃぐ声。ああ、オレも混ぜて欲しい、、、などという欲望を押し殺し、薬局で買った耳栓を耳につめ、寝る。