2日目 ~初めてのお接待~

スタート位置:フェリーの上

訪れた札所:4ヶ所

1番 霊山寺

2番 極楽寺

3番 金泉寺

5番 地蔵寺





フェリー下船

朝6時起床。体のいたるところが痛い。こんな硬いじゅうたんの上で寝たら当然か。でもこれからはきっともっと環境悪いし。こんな飯有り、屋根有り、シャワー有りな場所なんて贅沢なものだろう。



デッキに出ると、360度広がる水平線が見えた。すげえ。でも30秒で飽きる。それよりも、デッキの向こう側にたたずんでいる女の子に目がいく。かわいい、、、まじ?こんな船に乗ってるのはほとんど男、もしくは家族連れ。かなり珍しいぞ(あとで分かったがこの人、人妻だった)。船に乗っていると心もオープン、なにに対しても「まあ、いっか」という気分になる。いろいろ考えたが、ボウズなのでやめといた。そう、オレは遍路に修行にいくといって気合入れも兼ねてスキンヘッドにしたじゃないか。これは修行の旅、邪ナ心ヲ持ツベカラズ。





デッキは気持ちいいね。





船はやがて、徳島港へ到着する。下船の待ち時間の間、船員の一人が話しかけてきた。

「自転車かい?」

「そうです、遍路まわろうと思ってまして」

「おおー、私も昔自転車でちょっとまわったよ。12番あたりから厳しくなっていくんだよねー」

船員はそういってわざわざ売り物であろう地図を売店からだしてきて、みせてくれた。この時は「12番」がどんな意味を持つところなのか想像もつかず、ただ「まあ大変なんだろうな」という印象しか持たなかった。この「12番」に後でどれだけ泣かされるかも知らずに、、、





遍路グッズショッピング

昼過ぎ下船、自転車の組み立ても完了。1番札所、霊山寺へ向かう。

やはりはじめは走り慣れるまで少し時間がかかった。四国という土地の道に慣れるのもそうだし、またチャリ旅は2年ぶりなのだ。昔の感覚を思い出しながら、ゆっくり走っていった。





東京と景色は一変する。





1番霊山寺の入り口に着くなり、観光バスと白い装束来たじーさんばーさんがたくさんいて驚く。この白装束集団、すごい数の人がいてぞっとした。すぐに慣れたけど。

はじめに、遍路グッズが全て揃うという店にいき、そこのおばちゃんに「遍路初めてです」と伝える。必要なものは、まず

・笠

・白装束(白衣)

・金剛杖

だという。そして人により数珠だの輪袈裟だのも用意するらしい。

そして寺での作法に必要なもの、すなわち

・お札

・ろうそく

・線香

そして、「納経(のうきょう)」といって寺を訪れた証を記す「納経帳」もすすめられる。



はっきりいって、あまりいろいろ買うつもりはなかった。もともと信仰心うんぬんからはじめた遍路ではなく、「どうせ四国一周なら遍路でしょ」というノリだったからだ。

特に納経に関しては納経1回につき300円ということを知っていたので初めから買うつもりはなかった。



納経帳代+(納経代300円×88)=3万円弱



である。そんな金あったらうまいもんでも食うわ。

しかもチャリなので笠かぶって走るのも、杖持って移動するのもわずらわしい。ろうそくも線香もめんどくさいからパス。バチ当たりな遍路である。



結局、形をマネる程度の白衣とお札、そして小さい数珠を買った。これでも3300円。いい商売だよな。

お遍路パンフレットで覚えた手順を早速試しに、寺の本堂へ向かう。オレは般若心経の読み方がいまいちよく分からなかった&恥ずかしかったのでそこらにいた寺のおばちゃんにやり方をきく。

「あのー、お遍路初心者なんですけど、ここで般若心経読めばいいんですよね?」

「雨のしずくがボツボツと落ちるように、、、」



、、、え?

いきなりなにを言いだすんだこのおばちゃん。

「雨のしずく、、、ですか?」

「そう、雨のしずくがボツボツと落ちるように読むんじゃ」

ああ、読み方のコツのことか。むやみに意味ありげなしゃべり方だ。

オレは「ボツボツ」と般若心経を読み上げる。つっかえつっかえで聞けたものじゃないな。難しいぞ般若心経。とりあえず息継ぎはどこでするんだ?



納め札を納札箱にいれて、本堂でのお参りは終わり。本来は「本堂」と「大師堂」のふたつで同じような手順をふまなくてはならないのだが、、、大師堂はパス。次の札所、2番極楽寺へ向かう。



一番の門の前で撮影。遠すぎてなんだかわかりません。





この2番極楽寺へ向かう途中で、般若心経が書いてある遍路パンフレットをなくしてしまう。なんというか、ダメダメ遍路である。しかし、もともとあまりお経に対するモチベーションも高くなかったので、「まあまたいつか手に入ったら読もう」と思いしばらく「お経なし、寺にいったら手を合わせて札を納めるだけ、しかも本堂だけ」という、ものすごく省略されたお参りが続く。





お接待初体験

3番金泉寺のお参りを終え、駐車場で地図をみていると、寺の方からぶつぶつとお経のようなものを唱えながら歩いているおばあちゃんがこっちに近づいてくる。

"、、、やばい人?"

まだ遍路の文化に慣れていないオレは、東京の感覚で物事を考えてしまう。東京でこんな怪しい呪文を唱えている人がいたら新興宗教の信者か精神異常者以外の何者でもない。

すると、おばあちゃんは声をかけてきた。

「今日も暑いねえ」

「あ、はい、暑いですね」

「どっからきたの?」

「あ、東京です」

"なんだ、普通の人だ"なんて失礼な誤解に気づきながら話していると、おばあちゃんは自分の自転車のカゴから草もちを2つとりだし、

「今朝買ったもんだけど、2コあるからどうぞ」

といっておれに一つくれた。

おおお!これがウワサにきいていた「お接待」というやつか!お遍路旅の心配の一つとしてお接待があった。「もしお接待を一度も受けないで帰ったら、さみしい、、、」という心配だったのが(なにを目当てにきてるんだか)、そんなものは初日で解消する。オレは"初お接待"でちょっと舞い上がり、「なんていいばあちゃんなんだ!」と感動していた。



このおばあちゃん、聞くと80歳らしいのだが、すごく若く見える。よく笑うし、なによりよく喋る。それも、老人特有のあの

「同じことを何回も何回も何回も繰り返す」

話し方で。しかも話がとびとびで繋がりがはっきりしない上、方言と古い言葉が入り混じっていて言っていることがよくわからない。オレは

「はー、そうですかーそれは大変ですねえ」

等と適当に相づちをうっていた。



まあ確かにこのおばあちゃんの話、実際に大変そうなのだ。

自分の弟が海軍に志願してすぐに戦場にいくことになり、高価な日本刀を持たせただの、尋常小学校に入る前からめちゃくちゃ親の手伝いをやらされ、真夜中にカイコのために桑の葉っぱを摘んだ、だの。およそ23歳東京育ちのオレの想像を越えている。



ばあちゃん95%、オレ5%くらいの割合で喋り続け、30分ほど経った。そろそろ日が暮れる。おれは半ば無理やりおばあちゃんの話をさえぎり、5番札所に向かうと告げる。すると

「私も家がそっちだから」

といって途中まで案内してくれるという。ぼろい自転車を80歳のおばあちゃんがこぐのか、こりゃ相当スローペースで進まなければ、、、と思いきや、このおばあちゃんペダルをぐんぐんこいでいる。ほんとに80歳なのか!?



オレは夕飯を買うため、ローソンに立ち寄る。おばあちゃんとはここでお別れだ。オレは礼をいい、おばあちゃんは去っていった。

おにぎりを買って、5番札所に向かってチャリをこいでいると、

道端になんとさっきのおばあちゃんが待っているではないか。

そして突然

「あんたほら、これ飲みな」

といって、ホットココアを渡される。

「あ、、、ありがとうございます」

と礼をいいつつも、戸惑う。





チャリに乗ったまま、紙コップ入りのホットココアをどうしろというのだ。





おばあちゃんはいってしまった。全く謎である。

こんなむし暑い中、ホットココア(しかも飲みかけ)を渡され、お接待だからムゲに扱うこともできず、チャリに乗ったまましばらく「フーフー」いいながら飲んでた。



線香小屋に泊まる

5番札所はすぐにみつかった。順番からいうと次は4番なのだが、寺の位置的に5番が手前にあるのでこっちを先にまわる。

もうだいぶ暗くなってしまった。寺の人に頼んで、テントをはらせてもらうように頼む。

すると

「テントはちょっと、、、でも遍路さんには線香小屋を貸していますよ」

小屋!とりあえずテントよりは落ち着けるだろう、と思いみてみると、、、

まじで小屋だ。広さにして3畳ほど、板で壁と屋根を作ってみました、という感じ。



、、、テントの方がよかったんじゃ、、、!




でもこれもなにかの縁。こういうのを大事にしよう。



やはり寺は真っ暗である。





オレはくもの巣をぼーっと眺めたり、寝袋の上に登ってくるゴキブリや、耳元に寄ってくる蚊と戦ったりしながら、寝る。